花と音楽は似ている。そう言うと、戸惑う人もいるかもしれない。しかし、ロックであれクラシックであれ、そこにあるものは常に瞬間的な音の連なりであり、決してひとつのかたちにとどまることなく生まれては消えていくそのプロセスは、美しく咲いてはいずれ必ず枯れてゆく、花の喩えとならないか。ゆえに花は音楽のようであり、音楽は花のようである。
「Distortion×Flowers」は、花屋を営む東信が、楽器と接続しさまざまな音響を生み出すエフェクターと、花を掛け合わせた展覧会である。あたかも花器に花をいけるように、東がそれぞれのエフェクターから発せられる音に触発され組み合わされた花の、そのすがたを見てほしい。妖艶なもの、甘美なもの、刺々しいもの、猛々しいもの、さまざまな花のかたちがここにある。会場は写真作品が多くを占めるが、初日に東ら三人がライブを行い、その舞台の痕跡を生々しく残す花のインスタレーションに加え、その模様を編集したヴィデオも床置きで展示されている。それらからは本展のコンセプトである「音の歪み」を表現した花のすがたをダイレクトに感じることができようが、けれども私が最も注目したいのは写真である。東の相棒である椎木俊介が写し出すものは、かつて生き、しかし今も写真の中で呼吸をしている花たちである。東も椎木も、花の生命に脈打つ鼓動を聴くことのできる人であり、ここに表現されているのはその音のかたちにほかならない。その脈動に、耳をかたむけてはどうか。
小金沢智/美術評論家
エフェクターとは、音響効果(Effect)を与える目的で使用される機器のこと。マイクで集音された音、あるいは電気機器など電気信号に変換された音声に対して、スピーカーまたは録音媒体に至るまでの途中に挿入し、一定の効果を与え、さまざまな音に変化させる機器のことを指す。
東 信 (あずま まこと)
1976年福岡県生まれ。2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。花屋を営む傍ら、2005年からはNYでの個展を皮切りに海外へも活動の幅を広げ、同年12月パリのセレクトショップ「コレット」のクリスマス・ウィンドーディスプレーは大きな反響を呼ぶ。2006年11月にはパリのカルティエ現代美術財団の「ソワレ・ノマド」に招聘されアートパフォーマンス「Kehai(気配)」を披露、2008年7月にはドイツ(デュッセルドルフ)NRWフォーラムにて1ヶ月に及ぶ個展「BOTANICAL SCULPTURE」を開催し約6000人の来場者を集めた。
2008年10月〜2009年1月まで東京ミッドタウンにて開催の21_21 DESIGN SIGHT「セカンドネイチャー」に参加。2009年3月18日〜5月24日には三菱地所アルティアム(福岡市天神イムズ8F)にて個展「AMPG vol.25」、同時に福岡イムズ20周年記念の館内装飾を手掛ける。2009年4月ミラノサローネと同時開催のトリエンナーレ美術館「TOKYO FIBER 09 SENSEWARE」へも出展が決定している。また2007年4月から今年3月まで自身の作品発表の場として、東京・清澄白河に2年間限定のプライベートギャラリー「AMPG」を運営。
東の全てにおける活動は、花・植物のみが有しているもっとも神秘的な形を見つけそれを美的なレベルに変換し表現する事で、植物の価値を高める事に一貫している。